• 検索結果がありません。

心臓から産生されるホルモンの慢性腎臓病に対する保護効果を発見 研究活動 | 研究/産学官連携

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "心臓から産生されるホルモンの慢性腎臓病に対する保護効果を発見 研究活動 | 研究/産学官連携"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

平成 26 年7月 30 日

心臓から産生されるホルモンの慢性腎臓病に

対する保護効果を発見

名 古 屋 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 ( 研 究 科 長・ 髙 橋 雅 英 ) 分 子 心 血管 病 学 ( 興

和)寄附講座 大内乗 有(おおうちのりゆき) 教授、循環 器内科学室 原豊明(むろ

はらとよあき)教授、循環器内科学早川智子(はやかわさとこ)大学院生らの研究

チームは、心臓から分泌されるホルモンが慢性腎臓病の進行に保護的な作用を

示 す こ と を 発 見 し ま し た 。 本 研 究 成 果 は 、 米 国 の 科 学 雑 誌 『 Journal of the

American Society of Nephrology』(米国東部時間 7 月 28 日付けの電子版)に掲載

されました。

我が国において慢性腎臓病は年々増加しており、今や国民病の一つです。慢

性 腎 臓 病 は 心 疾 患 の 危 険 因 子 で あ り 、 一 方 で 心 疾 患 が 慢 性 腎 臓 病 を 引 き 起 こ

す、つまり、心臓病と腎臓病はお互いに関連して進行するという「心腎連関」という

概 念 が 提 唱 さ れ て い ます が 、 そ の 機 序 は 十 分 に は 解 明 さ れ て お らず 、 有 効 な 予

防・治療法は見つかっていません。

研究チームは、心臓が産生する Fstl1(Follistatin-like 1)というホルモンに着目

し、動物モデルにおいて Fstl1 が腎臓保護効果を有することを明らかにしました。

マウスの慢性腎不全モデルにおいて心臓から分泌される Fstl1 の産生が増え、血

中濃度の増加も認めました。心臓が Fstl1 を産生しないマウスに慢性腎不全モデ

ルを作製すると対照マウスと比べて、腎臓組織内の炎症反応が悪化し、腎機能の

悪化を認めました。また、マウスの慢性腎不全モデルにおいて、Fstl1 を全身投与

したところ 、腎臓 組織内 の炎症反 応が抑 制され 、腎機 能の改 善を認め ました 。ま

た、Fstl1 は腎臓の細胞に直接作用し、炎症反応を抑制していました。

本研究の結果より、Fstl1 は抗炎症作用を有し、慢性腎障害を抑制する心臓

由来のホルモンであることが明らかとなりました。Fstl1 は「心腎連関」の病態に関

与する分子 であり、 慢 性腎不全の予防・ 治療 薬開発の標的に なりうると考えられ

ました。

(2)

プレスリリース

タイトル

心臓から産生されるホルモンの慢性腎臓病に対する保護効果を発見

ポイント

○ Fstl1(Follistatin-like 1)は心臓が産生するホルモンであり、マウスの慢性腎不全モデルに おいて心臓から産生されるFstl1が増加した。

○ 心臓がFstl1を産生しないマウスは慢性腎不全モデルにおいて腎障害が悪化した。

○ マウスの慢性腎不全モデルにおいてFstl1を全身投与すると腎障害が改善した。

○ Fstl1は慢性腎不全時に腎保護効果を示すと考えられ、慢性腎臓病の治療法開発の標的分子に なりうる。

要旨

名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・髙橋雅英)分子心血管病学(興和)寄附講座 大内 乗有(おおうちのりゆき)教授、循環器内科学室原豊明(むろはらとよあき)教授、循環器内科学 早川智子(はやかわさとこ)大学院生らの研究チームは、心臓から分泌されるホルモンが慢性腎臓 病の進行に保護的な作用を示すことを発見しました。本研究成果は、米国の科学雑誌『Journal of the American Society of Nephrology(米国東部時間728日付けの電子版)に掲載されました。

我が国において慢性腎臓病は年々増加しており、今や国民病の一つです。慢性腎臓病は心疾患の 危険因子であり、一方で心疾患が慢性腎臓病を引き起こす、つまり、心臓病と腎臓病はお互いに関 連して進行するという「心腎連関」という概念が提唱されていますが、その機序は十分には解明さ れておらず、有効な予防・治療法は見つかっていません。

研究チームは、心臓が産生するFstl1(Follistatin-like 1)というホルモンに着目し、動物モデルに おいてFstl1が腎臓保護効果を有することを明らかにしました。マウスの慢性腎不全モデルにおい て心臓から分泌されるFstl1の産生が増え、血中濃度の増加も認めました。心臓がFstl1を産生し ないマウスに慢性腎不全モデルを作製すると対照マウスと比べて、腎臓組織内の炎症反応が悪化し、 腎機能の悪化を認めました。また、マウスの慢性腎不全モデルにおいて、Fstl1 を全身投与したと ころ、腎臓組織内の炎症反応が抑制され、腎機能の改善を認めました。また、Fstl1 は腎臓の細胞 に直接作用し、炎症反応を抑制していました。

本研究の結果より、Fstl1 は抗炎症作用を有し、慢性腎障害を抑制する心臓由来のホルモンであ ることが明らかとなりました。Fstl1 は「心腎連関」の病態に関与する分子であり、慢性腎不全の 予防・治療薬開発の標的になりうると考えられました。

1. 背景

我が国では慢性透析患者数が30 万人を超え、未だに増加し続けています。慢性腎臓病の患者数 は推計で1,330万人に達し、成人の8人に1人が慢性腎臓病と言われています。慢性腎臓病は心疾

(3)

患の危険因子として知られていますが、一方で、慢性心不全を含む心疾患が慢性腎臓病の発症や進 展に関与していることは多くの研究で報告されています。このような心臓病と腎臓病はお互いに関 連して進行するという病態は「心腎連関」と言われ、大きな問題となっていますが、その病態生理 や機序は十分には解明されておらず、その有効な予防・治療法は見つかっていません。近年、心臓 から分泌される多くのホルモ ンが心血管病をは じめとする全身性疾患の病態に関与していること がわかってきましたが、これらのホルモンの腎臓病における役割については十分には解明されてい ません。

2. 研究成果

研究チームは心不全の際に心臓からの分泌が増加し心臓に保護的に作用するFstl1というホルモ ンに着目し、心臓由来のFstl1の慢性腎臓病に対する作用を解析しました。

腎臓を5/6部分摘出することにより慢性腎不全マウスモデルを作成しました。部分腎臓摘出後の 腎不全状態において対照マウスでは心臓と血中での Fstl1 が増加していましたが、心臓において Fstl1 を産生しないマウスでは血中 Fstl1 濃度は低下しており、慢性腎不全の時には心臓が Fstl1 の主な産生部位であると考えられました。また、心臓がFstl1を産生しないマウスでは対照マウス と比べて、部分腎臓摘出後の尿タンパクは増加し、腎臓組織内の炎症反応の悪化と酸化ストレスの 増悪を認め、腎障害の程度が悪いことがわかりました。従って、心臓が産生するFstl1は慢性腎不 全の時に腎保護的に作用すると考えられました。さらに、マウスの部分腎摘出後にFstl1を全身投 与すると腎臓組織内の炎症反応や酸化ストレスが抑制され、腎障害の改善を認めました。

細胞実験においては、培養腎臓細胞(ヒトメサンギウム細胞)にFstl1蛋白を添加すると炎症惹 起性物質の産生が抑制されました。その機序として、炎症を抑制するAMPキナーゼのFstl1によ る活性化が考えられました(図1)。

以上より、Fstl1 は腎臓組織での炎症反応抑制を介して慢性腎不全状態において腎保護作用を示 す心臓から分泌されるホルモンであることが明らかになりました(図1)。「心腎連関」の病態にお いてFstl1は重要な働きを果たし、慢性腎臓病の予防・治療薬開発に対しての標的分子になりうる と考えられました。

3. 今後の展開

心臓が産生する Fstl1 の体内でのより詳しい機能がわかれば、心腎連関の病態生理のさらなる解 明や腎不全状態における生体防御の機序解明につながるかもしれません。さらに、Fstl1の量を増 加させることや、このホルモンの働きを良くすることは、慢性腎臓病のみならず炎症に関連する健 康障害を改善する可能性があり、多くの疾患の予防法、治療法の開発につながることが期待されま す。

(4)

4.発表雑誌:

Hayakawa S, Ohashi K, Shibata R, Kataoka Y, Miyabe M, Enomoto T, Joki Y, Shimizu Y, Kambara T, Uemura Y, Yuasa D, Ogawa H, Matsuo K, Hiramatsu-Ito M, Van Den Hoff MJ, Walsh K, Murohara T, Ouchi N. Cardiac myocyte-derived follistatin-like 1 prevents renal injury in a subtotal nephrectomy model. Journal of the American Society of Nephrology (2014 年 7 月 28 日付けの電子版に掲載)

English ver.

http://www.med.nagoya-u.ac.jp/english01/dbps_data/_material_/nu_medical_en/_res/ResearchTopics/Fstl1_20140728en.pdf

参照

関連したドキュメント

あわせて,集荷構成の変更や水揚げ減少などにともなう卸売市場業者の経営展開や産地 の分化,機能再編(例えば , 廣吉 1985 ;中居 1996 ;常

これらの先行研究はアイデアスケッチを実施 する際の思考について着目しており,アイデア

に時には少量に,容れてみる.白.血球は血小板

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

その産生はアルドステロン合成酵素(酵素遺伝 子CYP11B2)により調節されている.CYP11B2

肝臓に発生する炎症性偽腫瘍の全てが IgG4 関連疾患 なのだろうか.肝臓には IgG4 関連疾患以外の炎症性偽 腫瘍も発生する.われわれは,肝の炎症性偽腫瘍は

昭和62年から文部省は国立大学に「共同研 究センター」を設置して産官学連携の舞台と

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を